支部長雑感

達人の頭をたたいた男

2013年08月13日

熊本支部は、1986年春頃に、山内文孝 前支部長が熊本市に
開設されたのが始まりです。山内 前支部長(以下、支部長と
します)は、先代館長の高弟のお一人でした。
私が熊本支部に入門したのは1987年7月ですので、支部が
開設されて少し経っていました。
今日のお話は、私の入門以前のことで、支部長からお聞きした
お話です。

熊本支部を開設され、張り切っておられた支部長の下(もと)に、   ある男が入門してきました。本当は、私にとって先輩筋に当たる
ので「男」という言い方は失礼になるかもしれませんが、お話の
構成上これで通させていただきます。

その男は、支部長に言わせると一風変わった男だったそうです。

「山籠(ご)もりがしたい!」「空手の奥義(おうぎ)を極め
たい!」「秘伝を教えてください!」などと、普段から支部長に
対し、しつこく言っていたそうです。

その男が、受審資格を得て昇級審査を受けることになりました。
前々回お話しましたように、熊本支部は九州北地区の審査を
福岡市で受けることになっていました。

熊本支部の伝統で、支部の面々は一緒の車で福岡に向かいます。
当然、なるべく複数の者が乗れるワゴンタイプが経済的で、
支部長はじめ道場生が一台のワゴンに一杯いっぱい乗って、
福岡に向かって車を走らせていました。

車は、道場生で満席です。
くだんの男は3列シートの3列目に座っていました。支部長は
2列目に座っておられました。

男の目には、支部長の後姿が映っています。

車に揺られながら、男は思いました。
「かの芦原英幸館長の高弟である山内先生ならば、館長同様に
先生も達人であるはずだ。達人ならば、後ろからの殺気を感じた
ならば、サッと避けることができるはずだ。
……よしッ!」

何を思ったか、その男はおもむろに手刀を固め、頭上高くに手を
振り上げました。そして、その手刀を、支部長の後頭部めがけて
思い切り振り下ろしました。

シュッ!

ゴンッ!

「あいたッ」
頭を抱えて、支部長は後ろを振り向きました。

そこには、驚愕と恐怖に駆られた男の顔がありました。

その後、その男がどうなったかは支部長に聞いておりません。
いいえ、聞けませんでした。

                          押忍

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