2013年08月07日
1988年頃の九州北地区の昇級審査は熱気にあふれ、
受審者だけでも120~130名の数で行われていました。
それに加えて、黒帯の先輩方が20~30名くらい来て
おられました。
その年の7月3日、福岡で夏季昇級審査が行われました。
正午前、審査が始まりました。
まずは先代館長のご講話がありました。先代館長もお元気で、空手界のお話やサバキの技術について非常に有意義なお話をされていました。
私たち受審者は、審査が始まる直前で緊張感が最高潮に
高まっている状況にもかかわらず、先代館長のユーモアを交えたお話に熱中して聞いていました。
そのお話も終わり、いよいよ昇級審査です。
私はその時点で4級でした。
稽古も積んで、勇躍、審査に臨みました。
審査では、まず各人の基本を見ます。その次に、技のコンビネーション・型・組手と続きます。120~130名が順々に基本を行います。すごい迫力です。
先代館長は、特に基本にこだわっておられました。
私は、基本は上手くいったと思いました。
そして、次に、技のコンビネーションです。
コンビネーションとは、各人が日頃の稽古で学んだ攻撃技を組み合わせて、一連の流れを作ったものであり、それを審査で見ていただくのです。
受審者のコンビネーションを館長が一人一人見ます。
番号を呼ばれた者がコンビネーションを披露していきます。
「1番の者、ゴーッ!」と呼びかけられ、受審番号1番の者が自身のコンビネーションを館長に披露します。
そして、次々に番号を呼ばれ、呼ばれた者がコンビネーションを行っていきました。
ドキドキしながら自分の順番を待ちます。
そして、ついに私の番です。
たまたま、私の受審番号は、右端の61番あるいは71番でした。どちらかよく覚えていませんが、端の番号でした。
先代館長の掛け声、「ゴーッ!」が響きます。
私は、思い切り右前蹴りを放ちました。そして、パンチのワンツー。上手くいったので、「良いぞ!」と心の中で感じていました。
そして、技の流れで左のハイキックにつなげました。
「あッ!」
左足のハイキックをだした途端、身体の体勢が右側に崩れました。
私は思わず、自分の右側の壁を思い切り「バン!」と手で叩いて、体勢を立て直しました。
受審番号が端だったため、自分のすぐ右手に壁があったのです。
体勢を立て直した後は、なんとかコンビネーションを終えることが出来ました。
コンビネーション終了後、私は元の構えに戻りました。
私は、壁を叩いたことを館長がどうか気付かずにいてくださるように祈りました。
チラッと館長の方を見ました。
館長は、審査用紙に私のコンビネーションの採点をしておられました。
審査用紙に目を落としたまま、一言ポツリ。
「壁を使ったコンビネーションは初めて見た!」と。
次の瞬間、審査会場が割れんばかりの爆笑に包まれました。
私は恥ずかしさのあまり、逃げ出したかったです。
この日のことは、今でも恥ずかしい思い出として、そして楽しい思い出として良く覚えています。
ちなみに、私は昇級できたのでしょうか。
びっくりしたことに、私は飛び級をいただき2級になりました。
壁を使ったコンビネーションが功を奏したのでしょうか。
恐ろしくて、先代館長にはお尋ねできませんでした。
押忍