支部長雑感

成長と老化

2019年12月26日

私の息子は、小学・中学・高校の12年間、ずっと学年で一番小さかったです。
エピソードをいくつか。

中学生に上がる時、初めて学生服を誂えます。その時「3年間で大きくなるので、大きめサイズにしておこう」と話し合い大きいサイズを買いました。
よくある話です。
中学校入学式の時、息子はぶかぶかの制服を着て式に臨みました。
しかし、卒業式の時も制服はぶかぶかのままでした。

高校に入り、それでも大きくなりません。周りの友人たちは成長期を迎え、または成長期を終え、既に大きかったです。
高校2年の春、家庭訪問で担任の先生が自宅に訪ねてこられました。
先生と息子、そして母親つまり私の妻の3人で話しました。
学校のことや勉強、進路のことなど話したそうです。
最後に先生が、
「今、何か悩みはないかい?」と尋ねました。
息子はにこやかに、
「いいえ、ありません」と答えました。
その時、妻が、
「身長のことは、どう?」
と息子に聞いたのです。
すると、笑顔だった息子の顔がみるみる曇って、ポロポロと大粒の涙をこぼしたのです。

仕事を終え家に帰った私に妻が、昼間のこの事を話してくれました。
夫婦にとっても息子の身長のことは長年の悩みでもありました。
今までずっと息子は穏やかにニコニコと暮らしていましたが、やはり身長のことは人知れず悩んでいたのでした。

……
高校2年の秋、17歳になった時、その頃でも息子は150センチそこそこの身長でした。
親子で話し合って病院で調べてもらうことにしました。
かかりつけの医師の紹介で大学病院の小児内科を訪ねました。
小児内科の専門医の先生が、いろいろ調べてくれました。
2~3回通院して、診断の結果が出ました。
先生は、
「手の甲の骨を調べました。この子の骨の年齢は現在のところ小学5年生くらいですね。これから身長が伸びてきますよ」とおっしゃられました。
「たぶん、175センチ以上にはなるでしょう」とも。
親子で飛び上がるように喜びました。

それにしても小学5年生の骨年齢だとは。
その後、高校3年になり、急に身長が伸び始めました。
大学生になっても身長が伸び続け、結果として本当に175センチになりました。

息子の成長カーブの不思議さを見るに、成長が遅いということは、老化も遅いということではないかと考えるようになりました。そして、成長が早いということは、老化も早いということなのではないか、と

……
私は、このことから別の意味での「成長」に関して色々考えるようになりました。
すなわち、小さいときからの英才教育で、スポーツの世界などで小学生や中学生でも大人顔負けの実力を誇る選手が、近年数多く輩出されております。
それは誠に結構なことで、それを批判する気持ちは全くありません。
しかし、成長が遅く、なかなか芽が出ない若者や青年でも、歳を取り、それこそ壮年、老年期になってから、非凡な実力を備えた人間になる人も多くおられます。

人間、生まれてから死ぬまでがひとくくりであり、どの年齢、どの段階で輝きを放つかはわからないものです。

今年一年の稽古で、よく道場生に話したこと、しつこく言っていたことがあります。
それは、「ゆっくり動け」ということでした。
「早く動いて、その動きを修得することのできる奴は少ないんだ」と。
「これは、人生にも言えることだ」とも言いました。

現在57歳の私は、未だに芽が出ずにもがいている最中です。でも、悲観していません。夢を諦めておりません。
もっともっと努力をしたいです。そして、前に進みたいです。
だからこう考えます。

「良いんです、ゆっくりで」

わたしは本当にそう思います。

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