支部長雑感

融通無碍

2019年08月25日

先日、久しぶりに中部大学教授武田邦彦先生とお話する機会がありました。いろいろ重みのあるお考えをお聞きすることが出来ました。

会話の中、私は質問で、
「テレビにコメンテーターとして出ておられる専門家の方々は、お話する内容について事前準備されるのですか」とお聞きしました。
それに対し、武田先生は、
「準備される方もおれば、準備されない方もおられます。
私に言わせれば、事前準備される方は専門家ではありませんね。
事前に準備するならば、なにも専門家でなくてもコメントできるじゃないですか。準備するなら、誰でもテレビで話すことができますよ。
専門家ならば、その場で臨機応変に、自身の専門知識をもって意見を述べることができるはずですよ」
とおっしゃいました。

なるほど!と思えたご意見でした。
先生ご自身をテレビ等で拝見すると、いつも肩の力が抜け自然体で座っておられます。それは蓄積された専門知識並びに違う意見及び批判に耐えうる自信をお持ちなんだという証明ですね。


このお話をお聞きしていて、ふっと頭に浮かんだのは、われら芦原会館の芦原英典館長のことでした。
館長ご指導の合同稽古や審査後に有志のみで行われる館長稽古などで示していただける、館長ご自身の動きは、まさにその道の「専門家」の動きであると思います。
まずは基本的な捌きからの攻撃を示されるも「この動きからは、このように変化できます。また、別のこんな攻撃もできます」など相手の攻撃に対する反応からの変化が、当意即妙、融通無碍に行われます。その動きは、まさに技の無限さを感じさせてくれます。
しかも、身体の力み一つなく、表情も柔らかなままです。


武田先生や館長に共通することとして、「事前準備」というのは、すなわちごくごく日常の絶え間ない研究や厳しい稽古のことであり、本番に至っては、そこに予めの用意など必要なく、いつものように淡々とご自身の実力を示されるだけなんだな、とあらためて感心しております。

押忍