支部長雑感

「線なし」に見る武道的境地

2020年11月22日

武道の稽古においては道着を着ます。剣道はその上に防具を身に着けます。そして、柔道や空手などは、道着を締める帯をします。

今回はその帯の話です。

ご存知のように、帯の片方には流派や団体名が刺繍されており、そして反対側に自己の名前を入れます。
そして、空手界の多くの流派や団体の黒帯には、名前の下に自らの段位を示す金線の刺繍が入っています。
例えば、初段の者の帯には1本の金線が入っています。五段の人の帯には5本の金線が入っています。
なので、同じ流派や団体の中でも、他支部の道場生で知らない方に会うと、帯を見ることで名前や段位を確認することが出来ます。


現在、武道雑誌などでも、いろいろな団体の人の道着姿を見ることが出来ますが、その方が高段位であると、その帯にはたくさんの金線が入っています。なるほど格好良いし、貫禄です。
私も若い頃から空手ファンでしたので、雑誌で有名な空手家や選手の写真を見つけては「この人は何段かな?」と目を凝らして、その方の帯の金線を数えたりしていました。


その後、芦原会館に入門し、時を経て、私も黒帯を締めることが出来ました。もちろん、頂いたのは初段ですので帯の線は1本でした。
その後、修行を重ね段位が上がるにつれ、帯の線も増えていきました。

ところが、芦原会館の帯の金線は、4本までしかありません。それより上の段位の帯には金線が入っていないのです。
館長、師範、師範代の方々の帯にも線がありません。
私は、入門して間もなく、先代館長の締めておられる帯に線が入っていないことに気づきました。

これはどういうことでしょうか。
芦原会館は、先代館長が創設されて以来、高段者の帯には金線がありません。
それが何故なのか、もちろん先代館長にお尋ねしたことはありません。
しかし、わたしは次のように考えています。
武道を志した者が、まず目指すのは黒帯取得です。そして、段位が上がることを目指します。
年数を重ね、修行は何十年と続きます。
そして、心身ともに「武道の精神」が身についた頃、段位は相当なものになっています。
この「武の心」を身に着けた武道家の、その長い間培ってきた精神の高みには、自らを外に向かって自慢する、誇示する、威厳を示すなどの余計なものは無くなってしまっているのです。

確信的に断言できますが、先代館長は会館創設の際、このことがお分かりであり、そしてその証左として、高段位のあかしである金線を帯の上から無くしてしまわれたのです。

私はこのような、先代館長から綿々と続いている武道精神に、昔も今も強く惹かれています。

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