2015年08月21日
私の父は、それは恐ろしい人物でした。
なにが恐ろしいって、顔が怖いうえに無口で、言葉より手が先に出てしまうような人でした。
思い出すのは、父が我が家に遊びに来た友人に冗談を言っても、その方たちには冗談が冗談に聞こえず(いかつい顔で真顔で冗談を言うので)、顔を強張らせてしまうシーンを何度も目にしました。冗談が通じなかった父は「冗談じゃろうが!」と腹を立てていました。
本題ですが、私が小学校4年秋の頃の話です。
夕方、弟(小学1年)と一緒に風呂に入っていました。
いつものように長い時間、風呂の中でふざけて遊んでいました。
その内、弟とケンカになり、弟は裸のまま、風呂場を飛び出していきました。
父に告げ口をしに行ったのです。
なんと言ったのかはわかりません。
父が、弟の話を信じたのかどうかもわかりません。
私は、湯船の中から、開け放たれた風呂場の扉の向こうをじっと見ていました。
すると、その扉の向こうに父が現れました。顔は例の恐ろしい顔です。その顔が怒りで益々恐ろしいモノになっています。
私は、湯船の中で硬直し立ち尽くしたまま、父を見ていました。
「ビュッ!」
何かが飛んできました。父が私に向かって何かを投げたのです。
そして、私は顔に衝撃を受けました。
それは、おもちゃのピストルでした。私か弟のものです。
ハッと気づくと、顔と上半身が血で真っ赤になっていました。
鼻と口の間に当たり皮膚が切れてしまったのです。
浴室で、顔も身体も濡れていたので、出血がひどくみえたのです。
以前も、雑感で書きましたように、子供の頃の私は、ひどく悪ガキで、毎日のように父に怒られていました。
口下手な父は、言葉より鉄拳が先でした。
しかし、この時は、父の驚愕の顔を見ることができました。
血を噴き出してひっくりかえった私を見て、あわてて近寄り、私を抱えて、家を飛び出しました。
私を背中に負ぶって、病院まで走ったのです。
広い背中でした。
負われたまま揺れながら思ったのは、
「これでしばらく怒られなくて済むッ!」でした。
私にとって、傷の痛みなど、父からの叱責に比べれば屁のようなものでした。
怪我も、ほんの数針縫っただけですみました。
怒るつもりでおもちゃを投げたもので、当たり前ですが当てる気は全くなかったそうです。
父は、後から母にものすごく怒られたそうです。
しかし、私は、父に対して、怒りも何も抱きませんでした。
なにより、怖い父から怒られなくなる期待の方が大きかったのです。
案の定、しばらくの間、父は私を怒るに怒れなかったのです。
……
世の中には、色々な人がいます。
笑顔の素敵な方、笑顔を作るのが苦手な方、誠実な性格なのに表現が下手な方、口下手な方、とても自己表現のうまい方・・・。
前々回の話につながりますが、今の自分のままで十分なのです。
口下手ならば、口下手のまま話をすればいいのです。
笑顔を作るのが苦手ならば、苦手なままの真心の笑顔でいいのです。
父は、非常に優しい性格でした。
顔がいかつく、言葉も少なく、その点で損ばかりしていた人でした。
しかし、優しさは伝わります。わかります。
今回は、息子に怪我をさせてしまったという不名誉な話になりましたが、本当は、亡き父のやさしさを書きたかったのです。
今では、懐かしい思い出です。
押忍
2016年03月17日
2016年03月14日
2016年03月12日
2016年03月09日
2016年02月26日
2016年02月06日
2016年01月01日
2015年12月23日
2015年12月03日
2015年11月21日