2023年08月24日
このところ、企業家の心構えに関するお話が続いていたところ、ふと以前にも同様なお話をさせていただいていたことを思い出しました。
2016年9月23日分のお話でした。
再掲させていただきます。
前回のお話で「観る」という言葉が出てきましたが、吉川英治先生は当然のことながら宮本武蔵の「五輪書」を引用されていたのだと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、この書で武蔵は「観見二眼」(五輪書水の巻)という考えを強調しております。
「見る」よりも「観る」方がとても大切であるということが書かれております。
戦いにおいて、目の前の相手を見つつ、全体を意識することがより大切だとの意味であります。
対峙している相手を見ていても、多敵の場合にはこれらにも神経を使い、そしてそれらを自分の姿を含めて大きく俯瞰することが肝要であると私は理解しております。
宮本武蔵研究者や武道研究家から非常に詳しい解説がなされておりますのでここでは詳細はいたしません。
この「観見二眼」を考えるとき、私は同時に必ず「三方よし」を思い出してしまいます。
近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」という格言です。
大好きな言葉です。
これは近江が東海道など主要街道に面し、古くから商業が盛んであり、そこで商いをしていた商人たちが是としてきたものです。
近江商人は、商売は自分だけが儲かってもダメ、相手にも利益がなければいけない、しかも彼我の行為が社会にとって有益でなければならないということ主張していました。
私は「我よし、相手よし、世間よし」と言っています。
武蔵の言葉は武道のそれであり当然ですが、商人の格言である「三方良し」も、日本武道のあり方につながっていると思います。
礼節を重んじること、戦う相手を尊敬すること、今戦っていることの意義を知ること、自分たちの武道が社会の役に立っているかを常に問うこと、などでしょうか。
そして、これら2つの格言は、私には、人が相対的な考えを持つべきであるという思考につながっています。
20代の頃、「三方よし」のことを知ったとき、「ふーん」と感心したことを覚えていますが、なかなかに自身の心に突き刺さるところまではいきませんでした。
しかし、年齢を重ねていくうち、人は自己の利益のみ(金銭に限りません)を追求するのではなく、相手のことひいては社会のことを考えるべきである、ということを少しずつ分かってくるようになりました。
もっというと、このかなり修養のいる行為を身に付け、それを実践していくと、いつか必ず自分自身にその益が返ってくることを確信できるようになりました。
もっとも、確信こそあれ、私自身が「三方よし」が出来ているかは自信がありませんが…。
人生、自分のためだけ、若しくは特定の者だけが得するような生き方は、ちょっと悲しいじゃないですか。
みんなが笑って暮らせる世の中にしていくためには、自分の性根から変えていくことが、遠回りのようで、じつは一番の近道なのではないでしょうか。
押忍
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