支部長雑感

腕力・腕力・腕力

2016年10月17日

一説によると佐々木小次郎の愛刀「物干竿」は3尺(約1メートル)だったそうです。これは日本刀の平均2尺3寸(約73センチ)に比べて遥かに長いものです。
佐々木小次郎は江戸初期の人物です。ちょうど日本刀が古刀期から新刀期に変わる頃に当たります。
一般に古刀は軽いのですが、それにしても3尺は長いです。おそらく重さも1.5キログラム以上はあったのではないでしょうか(ちなみに竹刀は約500グラムです)。さらに長さの慣性により扱う腕力としては相当なものが要求されたでしょう(もちろん小説や戯作の中の話ですので真剣に考えるものでは無いのかもしれませんが)。

また、小次郎のライバルであった宮本武蔵は、ある日のこと、某藩に招かれ、饗応の席で歓待を受けました。
その時「二刀流」に関して、その藩の藩士から質問を受けました。
「宮本殿、二刀流を使いこなすにはどれくらいの腕力や技量が必要なのですか」
時も過ぎ、もはやこの席を立ち去りたかった武蔵は、苛立ち紛れに立ち上がり、壁にかかっていた2本の火縄銃を手に取りました。
そして、両手に持った火縄銃をブーン・ブーンと振り回し始めました。居並ぶ藩士の頭上に、火縄銃が唸りを上げ、つむじ風をまきおこしました。
「これにて失礼」
唖然とする藩士のよそに、さっさと帰ってしまったとのことです。

木村政彦先生(戦前戦後を通じて13年間無敗。「木村の前に木村なし、木村の後に木村なし」と讃えられた不世出の柔道家。ちなみに熊本のご出身です)は、ベンチプレスで最高250キロを挙げられ、そしてその握力は200キロを超えておられたそうです(電車の吊革の輪っかをクチャクチャと曲げることができたとか)。
木村先生が編み出した腕緘み(うでがらみ)は、強力無比の腕力の成せる技だそうです(この技でグレーシー柔術の父であるエリオ・グレイシーをKOしました)。

などなど、かつての武道家には、すごい筋力、なかでもずば抜けた腕力を武器にされておられた方が多くいます。

さて、長い刀を振り回すことができる腕力や圧倒的な力技を羨ましく思う必要はあると思われますか。

いままで述べた方々がおこなうは、武器を使う武道や相手に密着する格闘技です。常に腕に力を入れておく必要があるものです。
この点、空手は離れて戦う武道で、よく言われることですが、相手と接するまでに勝負が決まってしまうのを理想としています。

そこで参考としたいのは、例えばプロ野球のピッチャーなどの技術です。細身の選手でも「豪」速球を投げることが出来ます。これは投げる技術や身体の他の部位を含めた総合的な身体操作などが要求されているのだと思います。
そして、当たり前ですがピッチャーとバッターは離れて立っていますよね。

いつも思っていることですが、自身の体を使いこなすことがまずまず先決で、かつそれで十分なのではないでしょうか。

体格についても同じです。
この世に生を受け、両親から貰った身体が、2メートルに足りなかった。120キロに足りなかった。「俺はもっと欲しかったなー」と?
いや、いらないでしょ!
古今の達人とよばれている武道家や先生方は、それほど大きい体格ではなかったといわれています(木村政彦先生のような例外もありますが)。

また、伝統的な武器術で、例えば小太刀流儀や杖道は、おのれの使う武器は非常に軽いものです。そのかわり体捌き、身体操作を大切にします。
空手はどちらかと言うとこの部類に近いのではないでしょうか。

もっと例えるならば、多機能なパソコンなどの精密機器も使う側の人間に技量がなければ、その多機能ぶりも意味のないものになります。

それと同じで、武道の中にある技術も自分の体を十分に使いこなして初めて、モノになるのではないでしょうか。
これを私達の目指すもので言うのなら、そのこなれた身体を使い、芦原空手のサバキを実践することで、身体の大きさや筋力の違いを十分カバーできるのではないでしょうか。

このことを信じて稽古と向き合いたいと思っております。

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