支部長雑感

優しさと厳しさ

2016年12月17日

予めの申し訳になりますが、芦原会館は道場生の日頃の稽古における安全配慮については細心の注意を払っております。

1990年頃、九州北地区の審査において、当時初段の私は審査中の組手で怪我をしてしまいました(まったくッ!実力がないにも程がありますね)。2週間ほど入院する怪我でした。
その際、先代館長から過分なお見舞いを頂きました。自分の怪我もどこかに吹き飛び、ありがたい気持ちでいっぱいでした。
そして、次の審査会で、先代館長に、完治の報告とお見舞に対するお礼を述べました。
「大丈夫か?心配したぞ」とお声掛けいただきました。
われわれ道場生には非常にお優しい方でありました。

話は変わって。
先日、大分地区のある先輩とお話する機会がありました。
その先輩は、昔(先代館長ご存命の頃)、他団体の地方大会に出場し、優勝されたことがあったそうです。
そして、その後間もなく、その先輩は総本部道場で稽古する機会がありました。先輩が道場で汗を流していると、総本部の3階にある先代館長のご自宅からお呼びがかかりました。
「3階に上がってこい!」館長からのご伝言でした。
先輩はドキドキしました。
「館長から直々にご自宅に呼ばれたー!」(心の叫び)
逸る気持ちを抑えながら階段を上がっていきました。

「押忍!失礼します」
玄関前で大きな声で先輩は叫びました。
館長は玄関を開け、そして、扉を開けたまま、
「おい、あんまり派手なことはするなよ。それだけだ!」ガシャ!(玄関を閉める音)
先輩は呆然と締まった玄関を見つめることになりました。

実は先輩は、試合に優勝した際、試合上で大きくガッツポーズをとられたそうです。そのことを先代館長は戒められたそうなのです。

……
すみません、少しふざけた感じになりまして。
これら二つの事を書いたのは、先代館長がとられた優しさと厳しさをお話したかったからです。

先代館長は、道場生(芦原会館会員)にはとてもお優しい方でした。
しかし、ご自分の眼鏡にかなった方々に関しては非常に厳しさを表に出されておられたように思われます。鍛える価値のある者には高いレベルの空手や人間性を要求されたのでしょう。
例えば、山内文孝前支部長はたびたび館長に叱責されていました。私は支部長が先代館長から怒られているシーンを何度も見ました。
しかし、先代館長は支部長に対して親しみと期待をかけておられたことは、そばで見ていて分かりました。
今お話した先輩に対しても同様であられたのでしょう。

……
師が厳しく指導する。それに弟子が応える。
当たり前のようですが、師がその弟子に厳しい指導をするに至るまでには、弟子には試される要件があるのだと思います。
それは、その者がその道で努力を続けることが本当にできる人間なのかそうでないのかということです。それを師が見極めるのです。

先の先輩のお話を伺った時、私は正直うらやましいと思いました。
私は、別に自虐的な志向(はっきりいうとマゾっ気)を好む人間ではありませんが、先代館長に厳しいご指導を受けたかったと思います。そこまでの実力がなかったのですね。

……
現在、そんな私も道場で指導する立場にありますが、言葉こそ努めて丁寧に話しますが、やはり期待する道場生、努力を続ける道場生には厳しく指導しているつもりです。

先代館長の優しいお言葉や厳しく叱責された光景など、今でもよく思い出されます。

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