支部長雑感

独行道

2017年01月22日

「独行道」(どっこうどう)とは、宮本武蔵が最晩年に書き表した自らの人生を振り返った人生訓です。
ご存知の方も多いと思われます。


「独行道」

一、 世々の道をそむく事なし 
  (世の中の道にそむくことがなかった)

一、 身にたのしみをたくまず 
  (我が身の楽しみを追い求めなかった)

一、 よろずに依怙の心なし 
  (すべてにおいて他に依り頼む心がなかった)

一、 身をあさく思 世をふかく思ふ
  (自分のことは軽く、世の中のことを重く考えた)

一、 一生の間よくしん思わず 
  (一生の間欲深い心を起こさなかった)

一、 我、事におゐて後悔をせず
  (私は何事においても後悔をしなかった)

一、 善悪に他をねたむ心なし
  (善悪で他人を妬む心がなかった)

一、 いずれの道にもわかれをかなしまず
  (別離を悲しむことがなかった)

一、 自他共にうらみかこつ心なし
  (自分のことでも他人のことでも恨みを起こすことがなかった)

一、 れんぼの道思ひよるこころなし
  (恋慕のことを思うことがなかった)

一、 物毎にすきこのむ事なし
  (物事に好き嫌いをしなかった)

一、 私宅におゐてのぞむ心なし
  (自宅に贅沢なものなど何も望まなかった)

一、 身ひとつに美食をこのまず
  (常に身一つにして美食を好まなかった)

一、 末々代物なる古き道具所持せず
  (代々伝えていくような古い道具を持たなかった)

一、 わが身にいたり物いみする事なし
  (自分の体を大切にし物を増やさなかった)

一、 兵具は格別よの道具たしなまず 
  (兵具以外の道具をたしなまなかった)

一、 道におゐては死をいとはず思ふ
  (道の追求には死を厭わず思った)

一、 老身に財宝所領もちゆる心なし
  (年をとって財宝や土地を持たなかった)

一、 仏神は貴し 仏神をたのまず
  (仏神は貴いが、仏神に頼ることがなかった)

一、 身を捨ても名利はすてず
  (自分の身は捨てても名誉・勝利は捨てなかった)

一、 常に兵法の道をはなれず 
  (常に兵法の道を離れなかった)


最近、新しく刊行された「宮本武蔵という生き方」(別冊宝島 2016年10月10日発行 宝島社)の巻末に載っていた「独行道」の、その訳文が良かったので併記しました。

「独行道」は、高校生の頃、吉川英治先生の「随筆宮本武蔵」や、その他の書物に書かれていたので読んだことは度々あったのです。しかし、その頃から近年に至るまで、その内容を理解するには程遠いものがありました。また、自分の心に響かない項ばかりでもありました。
さすがに「我事におゐて後悔をせず」は大好きな言葉で、若い頃から手帳やノートに書いて座右の銘にしていたほどでした。他の言葉には、それほど感じるものはありませんでした。

それが果たして、空手を始めて、そして年齢を重ねるほどに、この「独行道」の項それぞれが、まさに空手修行、そして人生の指標として自分の心に響いてきました。
現在の自分の、自分なりの理解ではありますが、今後も続くであろう空手修行の支えになる言葉の数々であります。

まったく、現代の、この混沌とした時代においても、いいえ、こんな時代だからこそ、この宮本武蔵の言葉は非常な輝きをもって日本人の心に響くのではないでしょうか。

押忍

2017年03月02日

キング・ケニー

2017年02月16日

あれはお前が悪い

2017年01月22日

独行道

2017年01月01日

手伝ノススメ

2016年12月17日

優しさと厳しさ

2016年11月28日

臆病な人を笑ってはいけない

2016年11月07日

百尺竿頭進一歩

2016年10月17日

腕力・腕力・腕力

2016年09月23日

三方よし

2016年09月04日

「肚で観ろ」

前の10件<< >>次の10件