支部長雑感

採用面接での出来事

2017年08月11日

今から15,6年前、私が二段の頃のお話です。

会社の役員をしている関係で、かつて社員の採用面接を担当しておりました。

社員を採用する時期となり、その日も数名の入社希望者に対する採用面接を行っていました。
机を挟んで入社希望者と向き合います。内容としては当社を希望する動機や履歴書を見てその内容について私の方から尋ねたりします。

何人目かの面接の時のことです。

トントンッ(ノックの音)
「どうぞ」
「失礼します」
部屋に入ってこられた入社希望者が椅子に座り、履歴書を出します。
真面目そうな方でした。
「〇〇さんですね」
「はい、よろしくお願いします」
そんなやり取りから面接が始まります。
私は、受け取った履歴書を見て、いろいろ質問しました。

ひと通り決められた質問内容で、面接が進みました。
そろそろ面接の時間が過ぎようとした頃、ふと履歴書の「特技」の欄に「空手」とありました。

「お、空手をされているのですね」
「はい!」
「どちらでされているのですか」
「芦原会館です」
「えぇーーー!」(いや、びっくり)

まじまじと、その方のお顔を見ました。
親しみを込めて、
「僕も芦原空手をやっているのですよ!」
「そうですか…」(その人はちょっと冷静でした)
「どの位やられているのですか」
「そんなにしてませんが…」

私は、自身の勤めている会社に、芦原会館の道場生が入社するかもしれない期待から、更に質問を続けました。
「何級ですか?」
「二段です」
「えぇー、僕も二段ですよ!」
「……」

いくら会員の多い芦原会館でも、当時の九州地区で二段というのなら、当然知っている筈なのですが。
ちょっと怪しくなってきました。
「どこの支部で稽古されていたのですか?」
「水俣の方です」
「水俣に支部があるのですか」(実はありません)

ちょっと突っ込みたくなりました。
「先生は誰ですか?」
「名前は忘れました」

いよいよ怪しくなりました。
更に突っ込んで、
「二段を挑戦されたときは、型は何をされましたか」
「わかりません」(でも、嘘をついている顔ではないのですが)

……
ほどなく面接は終わりました。
残念ですがこの方は不採用になりました。もちろん「芦原空手」以外の理由によるものでしたが。

後になって思ったことですが、この方の話を聞いていて、ご自身が嘘をついているようには思えなかったところから、水俣で空手を教わった先生というのが、おそらく「芦原会館」の名前を騙っていたのでしょう。そうとも知らず、偽物を本物と信じて稽古をしていたその方が、かわいそうになりました。

その方には、不採用の連絡を3日後くらいにしました。
後で「本物」の「芦原空手」に誘えば良かったかなと思いました。不採用で気まずいので言い出せなかったのです。

珍しい経験でした。

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